日々のこと

日々のこと

赤毛のアン

「エデンの国がまだ少し残っているような、すばらしい日だと思わない、ダイアナ?」アンは幸せのあまり、思わずため息をもらした。「あたりは魔法でいっぱい。ほら、あの取り入れ中の谷間、紫色の靄をカップにそそぎこんだようじゃないの。それに、このモミの枯れ葉の匂いを嗅いでみて! イブン・ライトが柵の柱を切りだしていた、あの日あたりのいい、小さな窪地から匂ってくるのよ。 かくのごとき日に生きていられる幸せよ、モミの枯れ葉の匂いを嗅ぐは、天国なり。これ、三分の二はワーズワースで、残りの三分の一がアン・シャーリー。でも、天国には、モミの枯れ葉なんかないわよね? それでも天国で森の中を歩いているとき、モミの枯れ葉の匂いがしてこなかったら、天国も完璧な場所とはいえないような気がするわ。天国ですもの、木の葉は枯れないけど、枯れ葉の匂いはしているのかもしれないわね。きっとそうだわ。あのすばらしい香りは、モミの魂なのよ──そうだったわ、天国に行くのは、魂だけなのよね」

 

モンゴメリー赤毛のアン「アンの青春」(講談社掛川恭子訳) より抜粋

 

プリンスエドワード島じゃなくても、埃っぽくてごみごみした名古屋の片隅の古いアパートにいても、このくらい感動と感謝できるようなメンタル欲しいな